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【強制退職積立金制度(MPF)】-香港の年金制度- 税制メリット・2025年の制度変更も

2024.5.15

老後の年金が「いくら」「いつから」もらえるかは誰にとっても気になりますが、香港で仕事をする人にとってはなおさらでしょう。

香港には「MPF」という公的年金制度がありますが、日本の厚生年金制度とは異なる点が多々あります。このMPFは従業員を雇用する会社にとっても重要な制度です。

そこで本記事では、MPFの概要や仕組み、加入対象者や拠出額、将来の年金の受け取り方などについて解説します。MPFに加入されている方が香港の年金制度を理解する為は勿論ですが、ご自身が駐在員で自分はMPFに加入していない場合も、会社として理解しておく必要な内容も含んでおりますので、参考にして頂ければと思います。

MPFとは

MPFとは、Mandatory Provident Fundの頭文字を取った言葉で、日本語に訳すと「強制退職積立金制度」といいます。日本の厚生年金制度のように、従業員を雇用する会社が加入手続きを行います。

 制度名に「強制」とあるように、基本的に全員加入の年金制度で、後述する加入免除対象者以外は加入させなければなりません。これは外国人労働者も同様です。日本人だから加入しなくて良いと誤解している人も多いようですが、この点には注意しましょう。

MPFは比較的新しい制度で、導入当初は給料の手取り減を防ぐためMPFへの加入を拒む従業員もいましたが、会社や従業員の都合でMPF加入するかどうか、特定の従業員だけ加入させないといった判断はできません。仮に従業員からの申し出だとしても、MPFに加入していなければ会社も罰せられますので注意が必要です。

MPFの概要と社会的背景

香港は日本と同じく世界でトップクラスの長寿社会であるものの、日本のような老後生活を保障する社会保険制度がありません。そのため香港では基本的に各自で老後への備えをしなければならず、高齢化対策サポートの一環として香港政府により2000年に制度が導入されました。 

加入強制という面では日本の厚生年金制度に似ていますが、MPF制度の仕組みは日本の「企業型確定拠出年金制度(企業型DC)」に似ています。加入申込み受付から運用、年金支払いに至るまで、すべてのオペレーションはTrusty(信託会社)といわれる民間企業に任せられています。

MPFの加入免除対象者の条件

 MPFは基本的に強制加入の年金制度である旨前述しましたが、具体的には雇用期間が60日以上の18歳以上65歳未満の被雇用者を対象としています。この条件に当てはまればフルタイムかパートタイム従業員かを問わず、原則として全員加入させなければなりません。

 しかしながら、以下の要件に該当する場合は加入免除となります。

【加入免除対象者】

  • ・雇用期間が60日未満
  • ・ライセンス登録されている自営業者
  • ・公務員等、別途、法で定める年金等の対象となる職種の人
  • ・MPF免除申請を受理されたORSO(旧年金制度)に加入している従業員
  • ・香港での労働ビザの期限が13カ月未満の外国人従業員
  • ・香港に労働ビザで滞在し、自国の年金制度に加入している外国人従業員(駐在員)

「日本人を雇用する場合にMPFに加入させなければならないのかどうか」という疑問を抱いている人もいるかもしれません。本来加入義務がある人を加入させていないとして罰則を受けることのないように、ここで整理しておきましょう。

MPFの対象者・非対象者の確認方法

まずは、香港での就労が許可されているビザを確認してみましょう。ビザの種類が労働ビザで、かつ期限が13カ月未満の場合は「海外からの短期労働者」とみなされ加入免除対象です。 

期限が13カ月以上の労働ビザの場合には、日本の厚生年金にそのまま加入しているかどうかを確認しましょう。日本の厚生年金に加入している場合、保険料の2重払いを避けるために加入免除されます。一定期間、香港に派遣される駐在員などは主にこのケースに該当します。 

ただし、一定期間の駐在でも香港の滞在期間が長くなる場合は注意が必要です。パーマネントビザ(永住権)を取得した場合には香港市民と同様の権利義務関係が発生するため加入免除から外れ、あらためて加入手続きが必要です。 

これら以外の場合は日本人でも加入義務があります。冒頭でお伝えしたように、MPFは加入面では日本の厚生年金に相当しますので、たとえ日本の国民年金に任意加入しているといっても、会社は日本での年金の掛け金を負担しておらず、保険料の2重払いを避けるためにという考えに合致していませんので、MPFの加入免除にはなりません。

MPFの拠出金額

 MPFの拠出金額は給与額の10%を基本とし、下表の中段部分のとおり雇用主と従業員で折半して拠出します。対象となる給与は基本給のほか残業手当や住宅手当、ボーナスなど、金銭で支給されるすべてのものが対象です。

月次の給与対象確定拠出分(雇用主)確定拠出分(従業員)
HKD7,100未満対象給与×5%拠出不要
HKD7,100以上~HKD30,000未満対象給与×5%対象給与×5%
HKD30,000超HKD1,500HKD1,500

対象給与額によっては拠出金額の例外もあります。対象給与月額がHKD7,100未満の場合は雇用主による5%負担のみで従業員の拠出は不要です。 

対象給与月額がHKD30,000を超える場合は雇用主・従業員ともに拠出金の月額はHKD1,500(30,000×5%)が上限です。 

なお、雇用主、従業員の両者とも法律で定められた拠出額に加え、任意で上乗せ拠出することも可能です。

MPF税制のメリット

 MPFへの拠出は雇用主、従業員それぞれに税制上のメリットがあります。

雇用主側のメリット

従業員のために拠出した積立金は経費として計上できます。ただし、経費計上できるのは、強制部分の5%と任意拠出部分10%まで、合わせて従業員の総報酬額の15%が上限です。

従業員側のメリット

従業員自身が拠出した積立金は、所得税申告の際に税額控除の対象になります。

ただし、税額控除の対象は強制部分のみが対象となり、年HKD18,000(HKD1,500×12ヵ月)が上限です。

MPFと定年退職の補償金について

MPFは原則として65歳まで拠出し、65歳到達時に受給可能となります。受給にあたり、まずは香港の定年退職について知っておきましょう。

香港の労働法では定年退職に関する決まりがありません。そのため独自で定年退職規定を設けている企業もあります。ただ、その場合、労働法では「定年退職」は「会社都合による解雇」とみなされ、企業は「解雇補償金」あるいは「長期服務金」という解雇した場合の補償金を払う必要があります。ちなみに、これらの補償金は解雇対象となる従業員の雇用期間に応じて決まります。

  • ・解雇補償金…24カ月以上雇用した従業員を対象
  • ・長期服務金…5年以上勤務した従業員を対象

MPFおよび「解雇補償金」と「長期服務金」の相殺

 現時点では、「解雇補償金」または「長期服務金」を支払う際、企業が従業員のために拠出したMPFの積立金を原資として使用(相殺)することが可能です。しかしながら、MPFが高齢化対策をサポートする制度である点が重視され、2025年5月1日からはMPFと「解雇補償金」と「長期服務金」の相殺ができなくなります。

そのため、定年退職者に対する補償はもちろん、2025年5月1日以後に従業員を解雇する場合の補償金はMPFとは別に企業が準備しておかなければならなくなります。

とくに企業が香港事業から撤退する場合など、一度に多数の従業員の補償金の支払いが必要となるケースも考えられます。いまから他の積立制度等も活用し準備を進めておかれるといいでしょう。

MPFの引き出し要件

高齢化対策として必要な制度とはいえ、自己都合退職、駐在期間終了に伴う日本への帰国等々、事情はともあれ定年まで香港で働かないという人もいるはずです。その場合にはこれまで拠出した積立金がどうなるのか気になる従業員もいるでしょう。

そこでMPFの引き出し要件を知っておきましょう。以下のいずれかに該当する場合には積立金を引き出すことができます。

  • ・65歳到達
  • ・60~64歳までの早期退職
  • ・海外への移住、本国への帰国などにともない香港を永久出国する
  • ・病気やケガにより回復不可能となり、就業不能となった
  • ・末期疾病を患い、12カ月以下の余命宣告を受けた
  • ・過去1年間に拠出がなく、合計拠出残高がHKD5,000未満で将来の就業所定がない
  • ・死亡した

日本に帰国する人は香港出国前に手続きをするのが普通ですが、日本に帰国してから手続きすることも可能です。 

また、帰国にともない拠出自体は中止して、運用だけ継続することも可能です。MPFはポータビリティ(持ち運び)のある制度ですので、香港での転職・再就職などの際にこれまでのMPFを転職先のMPFに移して拠出を続けることもできます。 

なお、本人が死亡した場合には積立金残高は遺産となり遺族に分配されます。

香港を離れる場合はMPFの中途解約も可

MPFは、一部例外を除き、香港の会社で働くすべての人が加入する香港の年金制度です。従業員を雇用する企業は、従業員の老後生活に対する最低限の備えとして、MPFに加入させる義務があります。 

とはいえ加速度的に進行する長寿化の影響もあり、企業・従業員ともに、保険などを活用しながらさらなる自助努力も必要とされています。とくに企業は2025年5月1日から定年退職者を含めて従業員を解雇する場合の補償金とMPF積立金の相殺ができなくなるため、他の積立制度で別途資金準備が必要です。 

MPFに加入していて香港を離れた人は中途解約することも可能です。詳細はこちらの記事から確認していただけます。OSSJではMPF解約のサポートも承っています。